
『一応役立つ本だが・・・』
この種の本は、題名や著者の学歴を見ただけで買う人達が多いが、受験制度に懐疑的な人達はためらいつつ、それでもわが子のためにはと手にとるのではないだろうか。中身はさほど特別なことが書いてあるわけではないが、世の中の“勝ち組”がどのような精神構造をしているかを知るには好個の実例である。また日本の受験制度や日本におけるエリート層形成の歴史研究者にも役立つ本でもある。
東大入試中止を境に私立校中心にがらりと変わったという著者の指摘は興味深い。若い著者は当然この辺の事情は知らないが、現在50歳以上の人達には明らかである。当時の頃まで青少年にとって大学とは国公立であり、早稲田・慶応は格落ちとされた。現在でさえ、公務員の上級職はほぼ国公立出身者である。当時、受験勉強をするということは、従って単に世俗的な栄誉を得るという目的だけではなく、世俗を超えたもっと禁欲的姿勢であり、高尚なものであった。69年に一体何が起きたか?マックス・ウェバー流に言えば、エリート形成基盤の世俗“内”禁欲化が発生し、日本が経済大国として飛躍する直前に私大中心とする大量の二次エリート形成層が出現し、世の中の青年達は手頃なそれに飛びついた。ヨーロッパ大陸には私大はほぼ存在せず、理解不能なものであるが、日米でそれが評価されるというのは言わば“お金”になるからであり、私大が資本蓄積の流出先として、失業者吸収部分として機能している。このように考えると、親は安易に私立校重視に飛びつくべきではないし、海外の評価として日本の大学は世界の100に入るところは殆どないし、私大はゼロである。教育は方法ではなく、目的である。各種の方法に精通すれば確かに成功するだろうが、長続きはしない。世の“勝ち組”がどのような失敗をしているか、またそれでもわが子に多少でも“成功”させたいと思うならば、この本はそれなりに役立つかもしれない。